Succession技術継承
創業から四半世紀、
職人技の継承が始まった
機械式カメラの修理は、分解・調整のキーポイントが機種それぞれに異なる。
キィートスのベテランからU.C.Sで次世代を担う技術者へと手渡される、ニコン整備の真髄とは?
▲▶︎ニコンF修理のマイスターである技術顧問の菊地誠孝さんの指導を受けるU.C.Sの白戸太公さん。分解の順番や工具のセレクトに加え「そこ、固いから気をつけてね」などカメラを傷つけないように注意すべきポイントも指摘しながら実習が続く。

カメラ修理会社U.C.Sの選ばれた技術者は、キィートスのメンバーそれぞれが得意とする機種ごとに専門性の高いノウハウをマンツーマンで受講する修理技能研修を受けている。この日の講師は累計8000台以上のニコンFを修理してきた実績を持つ菊地誠孝さん。生徒の白戸太公さんは他メーカーのカメラや交換レンズの修理業務をこなしながら、週に3日キィートスに通っている。
初めてニコンFを分解する白戸さんに、手順や工具を丁寧に指示しながら作業が進む。菊地さんはニコンFの印象を「修理の前に現状を調べ、かなり悪いと思っていても分解して油を入れて計測すると結構いい数字に戻る。機械としての精密さがある、本当に素晴らしいカメラです」と語る。
その昔、菊地さんにニコンFの修理を指導したのはキィートス創業者の國井さんだ。「何も知らない私に優しく丁寧に教えてくれました。だから私も同じ気持ちで伝えるようにしています」
カメラを単純に正常動作する状態に戻すだけでなく、シャッターを押していく際に微妙な引っ掛かりがあれば分解をやり直すなど、細かい部分まで調整をしていく。「キィートスの品物が自慢できるのは、そういうところだと思います」
真剣な表情で講習を受ける白戸さんは「講師の方はカメラに対して見るところが違います。将来的にはそのレベルまで行きたいです」と語る。アナログカメラは交換部品がないからこそ、直せたときの手応えを感じるという白戸さんは今後ニコンも担当する予定。「今まで他メーカー仕様で工具を削っていたので、ニコン用も揃えると工具が増えていきます(笑)。これからFだけでなく数多くの機種をマスターしていきたいです」